【号外】建築とリフォームの今後、需要はどうなるのか|縮小ではなく“中身が変わる時代”に入った住宅業界
- はじめに:建築・リフォーム業界の今後
- 結論:住宅需要はなくならない。ただし“何が求められるか”が大きく変わる
- 今の住宅業界を重くしている現実は、すでに数字にも表れている
- 法改正と申請負担の増加は、小さな事業者ほど重くなる
- 新築住宅は“量の時代”ではなく“選ばれる条件の時代”に入る
- リフォーム需要はある。ただし“きれいにする工事”だけでは弱い
- 災害リスクの高まりは、防災・維持管理需要を押し上げる
- これから伸びやすい需要は“生活を守る工事”である
- 空き家900万戸時代は、リフォーム単体ではなく“住宅整理業”の時代でもある
- これから厳しくなるのは、“何でもやる普通の会社”である
- 小さな建築会社が今すぐ見直すべきことは、“何でも対応”から“専門性と標準化”への転換である
- AIは職人を置き換える道具ではなく、事務と判断整理を助ける道具である
- 今後3~5年は、新築弱含み・リフォーム横ばい・再編加速の流れになりやすい
- 10~20年後は、“大手の規格化”と“地域密着の住宅かかりつけ医”に二極化する可能性が高い
- まとめ:需要はある。ただし、従来と同じ需要ではない
はじめに:建築・リフォーム業界の今後
建築とリフォームの今後について、「もう需要は先細りではないか」「新築もリフォームも厳しくなるのではないか」と感じている方は多いと思います。実際、法改正、資材高、人件費上昇、物価高、金利、空き家問題、顧客の支出行動の変化など、業界を取り巻く逆風はかなり強くなっています。
しかし結論から言えば、住宅業界の需要がなくなるわけではありません。
変わるのは、需要の量よりも需要の中身です。これからは「新しく建てる」「見た目をきれいにする」だけでは弱くなり、防災・耐震・省エネ・高齢者対応・空き家整理・維持管理といった、生活と資産を守る仕事へ重心が移っていくと考えられます。
これからの建築・リフォーム業界の流れを把握していない会社は倒産、廃業を余儀なくされてしまうかもしれない。消して、危機感を煽るものではありません。
今から、変化に対応していくための準備と知識と余力を蓄えなければ生き残り、事業を継続していく「力」が無くなっていくかもしてれない。
現経営者も今後この建築・リフォーム業界で起業を考えている方も抱える問題点をまとめましたので一度しっかりと読んで方向性を判断する材料としてください。
リフォーム・建築業界は間違いなく、需要は減少し、少ない案件を売上や利益を削ってまで受けなければならない時代に入っていきます。その時になって動くのではもう、遅いかもしれません。
結論:住宅需要はなくならない。ただし“何が求められるか”が大きく変わる
今後の住宅業界は、需要そのものが消えるのではなく、需要の中心が変わっていくと見るべきです。
これまでのように「新築を増やす」「大きな全面改装を取る」という発想だけでは厳しくなります。一方で、今ある建物をどう守るか、どう性能を上げるか、どう使い切るか、どう整理するかという分野には、長く仕事が残ります。
つまりこれからは、
造る産業から、
守る・見極める・維持する・終わらせる産業へ、
住宅業界の性格そのものが変わっていく時代です。
今の住宅業界を重くしている現実は、すでに数字にも表れている
2025年の新設住宅着工戸数は740,667戸で、前年比6.5%減、3年連続の減少となりました。持家、貸家、分譲住宅のすべてで減少しており、新築市場が全体として弱含んでいることは明らかです。 Source
また、2023年時点の空き家数は900万戸、空き家率は**13.8%**で、いずれも過去最高となりました。住宅が足りない時代ではなく、余っている住宅をどうするかが本格的な社会課題になっているということです。 Source
さらに、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、2050年の単独世帯割合は**44.3%**に達すると見込まれています。従来型の「家族4人で住む郊外戸建て」を前提にした住宅需要は、構造的に縮んでいく可能性が高いと考えられます。 Source
法改正と申請負担の増加は、小さな事業者ほど重くなる
国土交通省は、2025年4月から全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付けること、また4号特例の見直しを進めることを案内しています。関連資料では、省エネ性能計算、設計図書作成、省エネ適判、2階建て木造一戸建て等の手続きや構造基準への対応が示されており、設計・申請・確認業務の比重が高まる流れが明確です。 Source Source
これは単なる一時的な手間ではなく、今後の標準実務になる可能性が高いです。
特に小さな工務店や地域のリフォーム会社にとっては、職人不足の中で申請・説明・確認対応まで担う負荷が重くなり、従来のやり方のままでは回らなくなる会社が増えると考えられます。
新築住宅は“量の時代”ではなく“選ばれる条件の時代”に入る
新築住宅の需要が完全になくなるわけではありません。
ただし、今後も安定して選ばれやすいのは、立地、防災性、断熱性、耐震性、維持費、資産性まで含めて説明できる住宅です。
逆に言えば、
「昔と同じ感覚で建てる」
「建物さえ良ければ売れる」
「郊外でも注文住宅はまだ回る」
という考え方は通用しにくくなります。
住宅の価格が上がる一方で、顧客側は融資、生活費、将来不安を強く意識します。
その結果、新築は欲しいから建てるよりも、合理的だから建てるという判断に変わっていきます。
これからは、夢を語る営業だけでなく、災害・維持費・将来売却まで説明できる営業が必要になります。
リフォーム需要はある。ただし“きれいにする工事”だけでは弱い
民間調査では、2024年の住宅リフォーム市場規模は7兆3,470億円、2025年も7.3兆円程度でほぼ横ばいと見込まれています。ですが、この横ばいは件数が安定していることを意味するわけではなく、資材費・人件費上昇による工事単価の上昇で市場規模が維持されている面があるとされています。 Source
つまり、売上は同じでも、
- 工事件数は減る
- 粗利は薄くなる
- 手間は増える
- 顧客は価格に敏感になる
ということが起こり得ます。
今後のリフォーム市場で残りやすいのは、単なる模様替えや意匠中心の改装ではなく、生活上の必要性が強い工事です。
耐震、防災、断熱、省エネ、雨漏り、給排水、屋根・外壁、防水、高齢者対応など、放置しにくいテーマの比重が高くなっていくと見ます。
災害リスクの高まりは、防災・維持管理需要を押し上げる
内閣府の新しい被害想定では、南海トラフ巨大地震の最悪ケースとして、死者約29.8万人、全壊焼失棟数約235万棟、資産等被害約224.9兆円が想定されています。国も、耐震化や防災対策、住宅備蓄、早期避難などの重要性を強調しています。 Source
この現実を見ると、今後の住宅需要の中で、
- 耐震診断
- 耐震補強
- 雨戸・シャッター・耐風窓
- 防水・止水対策
- 蓄電池や非常用電源
- 屋根・雨樋・排水の点検
- 家具固定や避難動線整理
といった予防型の住宅防災は、長期的に強いテーマになります。
ただし大事なのは、不安をあおる売り方ではなく、
予算別・優先順位別に提案できることです。
「全部やりましょう」ではなく、
「今すぐ必要」「3年以内」「5年以内」
に分けて説明できる会社が信頼されます。
これから伸びやすい需要は“生活を守る工事”である
今後残る・伸びる可能性が高いのは、次のような分野です。
- 耐震・防災改修
- 断熱・省エネ改修
- 屋根・外壁・防水・給排水などの必須修繕
- 高齢者・単身者向け改修
- 空き家の選別、再生、管理、解体
- 中古住宅購入前の診断
- マンションの維持管理・設備更新
- 災害復旧と平時の予防保全
- 定期点検・長期維持管理契約
特に高齢化と単身世帯化が進む中では、豪華な全面改装よりも、
1階だけで暮らせる間取り
浴室・トイレ・廊下の安全化
部分断熱
将来売却しやすい改修
といった、“暮らしを続けるための工事”が重要になります。 Source
今後の業界では、何でも受けるよりも、残る仕事を見極める判断がますます重要になります。実務的な考え方は、リフォーム工事を何でも受ける会社ほど苦しくなる理由|建築会社は断る判断が利益を守るで詳しく触れています。

空き家900万戸時代は、リフォーム単体ではなく“住宅整理業”の時代でもある
空き家が900万戸あるからといって、そのすべてがリフォーム市場になるわけではありません。
立地、権利関係、再販価格、相続、解体費、維持管理負担などを考えると、改修したほうがよい家、売却したほうがよい家、解体したほうがよい家が混在しています。 Source
だから今後伸びるのは、単純な「空き家リフォーム」ではなく、
調査 → 整理 → 判断 → 改修 → 管理 → 売却・賃貸 → 解体
まで視野に入れた総合対応です。
ここでは、
「直すべきか」
「貸すべきか」
「売るべきか」
「壊すべきか」
を中立的に言える会社が強くなります。
これは、これからの地域密着会社にとって大きな役割になるはずです。
これから厳しくなるのは、“何でもやる普通の会社”である
今後苦しくなりやすいのは、特徴がなく、価格競争に巻き込まれやすく、案件ごとの粗利管理が弱い会社です。
また、法改正対応、申請、住宅性能説明、施工後の点検や保証が弱い会社も不利になります。
特に、
- チラシや紹介だけに依存する
- 水回り交換だけで差別化しようとする
- 見積が一式表示中心で説明が弱い
- 補助金頼み
- 粗利より売上を追う
- 現場管理を職人任せにする
という体質は、今後ますます厳しくなるでしょう。
住宅需要が減るのではなく、
選ばれる会社の条件が厳しくなるということです。
小さな建築会社が今すぐ見直すべきことは、“何でも対応”から“専門性と標準化”への転換である
これからは、「何でもリフォームできます」よりも、
何に強いかを明確にした会社のほうが生き残りやすくなります。
たとえば、
- 耐震・防災・屋根外装
- 断熱・窓・省エネ
- 高齢者住宅・介護改修
- 雨漏り・漏水・給排水診断
- 空き家再生と住宅整理
- マンション設備更新
のように、2~3分野に強みを絞ることです。
専門化すると、
営業説明
見積
現地調査
職人教育
施工手順
アフター対応
まで標準化しやすくなります。
また、入口も「無料見積もり勝負」ではなく、
住宅診断
修繕優先順位表
10年計画の提案
など、診断型・提案型へ変えていくべきだと思います。
AIは職人を置き換える道具ではなく、事務と判断整理を助ける道具である
建設業就業者は、**55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%**で、高齢化と若手不足が大きな課題になっています。今後は人を増やすだけでは回らず、少ない人数でどう運営するかが重要になります。 Source
その中でAIが役立つのは、現場技能の代替よりも、まずは事務と整理です。
たとえば、
- 現地調査メモの文章化
- 写真整理
- 見積書のたたき台
- 工事説明文の作成
- 顧客への定期連絡文
- 過去案件検索
- 原価差異の整理
- クレーム傾向の見直し
といった分野です。
ただし、構造判断、法適合、数量、最終見積、契約判断までAI任せにしてはいけません。
AIは社長や建築士の代わりではなく、社長の頭の整理を早くする道具として使うのが正しいと思います。
今後3~5年は、新築弱含み・リフォーム横ばい・再編加速の流れになりやすい
直近3~5年で見ると、
- 新築住宅は弱含み
- リフォームは市場金額ベースで横ばいでも件数は厳しい
- 単価高、法令対応、人手不足が続く
- 小規模事業者の廃業、M&A、協業が増える
という流れが起こりやすいと思います。新設住宅着工はすでに減少傾向が続いており、住宅リフォーム市場も「件数減を単価上昇で補う」構図が見えています。 Source Source
ですから、今後は売上拡大だけを見るのではなく、
粗利益
再訪問回数
移動時間
定期点検からの受注率
紹介率
入金までの日数
といった、生産性と回収の数字を見る会社のほうが強くなります。
10~20年後は、“大手の規格化”と“地域密着の住宅かかりつけ医”に二極化する可能性が高い
長期的には、住宅業界は大きく二つに分かれていくと考えます。
一つは、大手・広域事業者による規格住宅、分譲、買取再販、大規模管理。
もう一つは、地域密着会社による、点検・小修繕・防災改修・高齢者対応・空き家管理・相続時の住宅整理です。
この中間にいる、
「普通の工務店」
「何でもやるが強みが見えない会社」
が最も厳しくなる可能性があります。
逆に、これから信頼されるのは、
建てるべきか
直すべきか
売るべきか
解体すべきか
を中立的に助言できる会社です。
つまり、施工会社であると同時に、住まいの判断支援業に近づいていく会社です。
これからの建築会社は、社長ひとりの頑張りではなく、仕組みで回る体制づくりも欠かせません。あわせて、社長が全部見ないと回らない会社が整わない理由|小さな建築会社が仕組み化できない本当の原因もおすすめです。

まとめ:需要はある。ただし、従来と同じ需要ではない
建築・リフォーム業界に今後も需要はあります。
ただし、それはこれまでと同じ形の需要ではありません。
縮みやすいのは、
- 一般的な郊外新築戸建て
- 高額な全面改装
- 意匠中心の改装
- 差別化のない水回り交換
- 売上だけを追う価格競争型の仕事
です。
一方で、残る・伸びる可能性が高いのは、
- 耐震、防災、水害、台風対策
- 断熱、省エネ
- 屋根、外壁、防水、給排水などの必須修繕
- 高齢者、単身者向け改修
- 空き家の選別、再生、管理、解体
- 中古住宅購入前診断
- 災害復旧と予防保全
- 定期点検、長期維持管理
これからの住宅事業は、夢や豪華さだけを売る商売から、
安全・健康・維持費・資産防衛・将来整理のしやすさを提供する商売へ変わっていきます。
工事件数そのものは減るかもしれません。
でも、建物は古くなり、災害リスクは高まり、所有者は高齢化していきます。
だから社会的な仕事量が消えるわけではありません。
本当の問題は「需要がないこと」ではなく、
必要とされる仕事と、顧客が払える金額をどう一致させるかです。
そこを見抜き、提案を変え、会社の形を見直せる事業者には、これからも十分に生き残る余地があると私は考えます。


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